旧SSK設立の経緯

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こちらのベージでは、現在の「一般社団法人新日本聖書刊行会」(SNSK)と合併した「一般社団法人(変更前有限責任中間法人)新改訳聖書刊行会」(SSK)が2003年に設立されるに至った経緯が記されています。以下の内容は歴史的記録のために残されているものですので、了解の上でご覧頂きますよう、お願い申し上げます。




はじめに

過ぐる1月末、新改訳聖書が法的に守られるために、筆舌に尽し難い戦いを戦ってこられた大先輩の舟喜順一先生がご退任され、不肖の私(津村俊夫)が新改訳聖書刊行会の理事長となりました。

これまでの半年余りは私にとりまして手探りの期間でしたが、実は新改訳聖書刊行会にとって二つの重要な法律に関わる仕事がありました。舟喜先生がそれまでに綿密に準備していてくださいましたので、理事会は弁護士と相談しながら、主の導きのもとに一つ一つ解決することが出来ました。それらは法人格取得といのちのことば社との合意書再締結の仕事でした。

前者は、新改訳聖書刊行会が法的にも翻訳団体としての立場を確立したことを意味しますし、後者は翻訳団体と出版社との関係を再確認した歴史的な出来事であったと言えます




「03年合意書」の意味

まず出版社との合意書再締結のことから説明いたしましょう。

この「03年合意書」は「96年合意書」の精神に基づくもので、それによりますと、新改訳聖書の著作権は、2008.1.1.をもって翻訳者側に返還されるという内容のものです。なぜそのような契約が必要だったのかを説明するためには、どうしても裁判のことに触れなければなりません。

皆さんが持っておられる新改訳聖書の表表紙の裏側に(c)Lockmanという記号が付いているでしょうか。もし第一版のままでしたらそうなっているはずです。第二版の場合でも初期のものには付いています。しかし、最近のものにはその記号は付いていません。それには次のような理由があります。

実は、新改訳聖書の翻訳に際して多額の(総必要額の46%)献金をして下さった(1966年8月で献金は停止)ロックマン財団の責任者が代替わりしたときに、財団は新改訳聖書の著作権がロックマン側にあるとの理解に立って、アメリカで、TEAM宣教団体に対して訴訟を起こしました。その訴訟は退けられましたが、それとの関連で、日本では、新改訳聖書がロックマン財団が出版していたNASB英語訳からの翻訳ではなく、ヘブル語・ギリシャ語原典からの翻訳であること、それゆえ著作権は日本人翻訳者側にあることを確認して欲しいと裁判所に訴えなければならない事態が生じました。それで、翻訳者側を代表して舟喜先生が多大な時間と労力を使って、新改訳聖書が日本で出版差し止めにならないように、TEAM側と協力して、献身的に努力して下さったのです。

事を非常に複雑にしていた要因に、当初、新改訳聖書委員会の議長K.マクヴィティ氏(後に新改訳聖書刊行会の委員長)が上記の宣教団体の事業部門である出版社側の代表でもあり、同時にロックマン側のパイプ役を務めていたということがあります。三つのグループ(翻訳者・出版社・財団)の責任ある役割を兼務しているうちに、必ずしも悪意ではなかったのですが、著作権の法的知識に乏しかったために、その方は間違った契約を結んでしまったのです。

アメリカで裁判が起きるまで、日本人関係者は新改訳聖書の訳業完成のための委員長並びに出版社側の並々ならぬ経済的努力に謝意を表し、自分たちの権利は極力主張せず全てを委員長に一任して、著作権のことや出版契約のことは余り自覚していなかったという事がありますし、宣教師側も主のみ言葉が日本の教会に広く用いられるようにとの思いでいたことは事実だと思います。

しかし、この方は、法律的には矛盾のあるメモランダム・アグリーメントとライセンス・アグリーメントという二つの契約を締結してしまいました。前者は、1962年に新改訳聖書刊行会とロックマン財団との間で結ばれた契約で、ロックマン財団が聖書翻訳の業のために資金を供与するという合意書でした。一方、後者は、1969年にロックマン財団といのちのことば社との間で締結された契約書で、ロックマン財団が新改訳聖書の著作権を有することを認めるというものです。その上で、いのちのことば社が、新改訳聖書の出版・頒布のライセンス(許可)を付与されるという合意書になっています。言い換えれば、マクヴィティ氏は、新改訳聖書刊行会の委員長として五人の日本人委員(堀川勇、牧瀬雄吉、羽鳥明、舟喜順一、松尾武)との連名でメモランダム・アグリーメントに署名しましたが、7年後には、日本人翻訳者たちの預り知らぬ所で、新改訳聖書刊行会の代表としてではなく、出版社の代表としてライセンス契約をしました。しかし、出版社にはこのような契約を結ぶ権利はなかったのです。

このことが日本人側に明らかになったのは、1994年3月24日、舟喜順一先生が裁判所に証人として立たれた時でした。裁判が長引く可能性があることと出版社が「(c)Lockman1963, 1965, 1968, 1970」という記載を1987年まで続けてきたために時効取得ということもあり得るという主張がされたりしたことなどから、裁判所の和解勧告を受け容れて、1996年に結審となりました。

和解金支払いのために宣教団体は多額のお金を立て替え、そして、その立て替え分返済に、新改訳聖書刊行会は毎年の印税分を当てるという「96年合意書」が、宣教団体と新改訳聖書刊行会との間で誠意をもって取り交わされたのでした。この立替金返済が終わるまで、TEAMが、そして2003年から2007年末まではいのちのことば社が著作財産権を有することになり、今日に至っています。

しかし、新改訳聖書刊行会は、著作人格権者として、翻訳内容に対して責任と権利を持っているわけです。このような背景を持つ「96年合意書」は、この度、スウェーデン同盟キリスト教団の事業部となった「いのちのことば社」と「中間法人・新改訳聖書刊行会」とのあいだで、「03年合意書」として再締結されたのでした。日本の教会は、新改訳聖書の著作権をめぐる一連の訴訟から何を学ぶことが出来るでしょうか。外部の商業的圧力から新改訳聖書の著作権を守るために、心血を注いで戦われた舟喜順一先生のご労苦を私たちはどのように受け留めるのでしょうか。

私は、これらすべての背後に、ものごとを摂理をもって導かれる歴史の主がおられることを強く感じます。新改訳聖書がこのような妨げと試練の中にあっても守られ、これまで日本の教会に広く用いられてきたことの背後には,先輩たちのご尽力があったことを思います。このような経緯の後,新改訳聖書がこの度16年ぶりに改訳され,「第三版」が出版されたことの意味は非常に大きいのです。やがて四年余りしますと、著作権が翻訳団体である新改訳聖書刊行会に完全に返還されます。日本の教会は、これからの聖書翻訳の働きのためにこれをどう生かすのかが問われています。




「中間法人」取得の意味

このような状況において、翻訳団体としての新改訳聖書刊行会が、本年4月1日をもって、「中間法人」となったことの意味は大きいと思います。これは、やがて返還される著作権の法的な受け皿としての立場が確立されたということであり、新改訳聖書の著作権が何人にも侵害されることのない権利として保護されることです。それは、新改訳聖書が持つ全ての権利が、将来の改訂・翻訳・出版においても守られるということです。

著作権を人格を持った法人に帰属させたのは、新改訳聖書が個人のものではなく、あるいは特定の団体のものでもなく、広く日本の教会の益となるために用いられるためです。新改訳聖書の翻訳の精神を法人が守るために、任意団体であった新改訳聖書刊行会の理事が中間法人社員として人格権を取得し、その精神を継承したのです。

しかし、これは聖書の翻訳を目的としている法人です。翻訳者の権利を軽んじることなく、聖書翻訳の業が継続的に世代から世代へと受け継がれていくために、この組織が健全に運営されなければなりません。

かつては、翻訳の働きは海外の主にある方々の献金によって支えられました。しかし、今や日本の教会は、自分たちの祈りと協力の中で、自分たちの教会の聖書翻訳の業を支えていく必要があります。本来ならば、次の改訂作業の準備は、印税収入をもって行えたはずですが、印税の全ては和解金立替分の返済に用いられることになってしまっていますので、「第三版」頒布による出版社側からの印税相当分等の支払いは2008年度になるまではありません。現在は、心ある主にある諸教会と個人からの献金が新改訳聖書刊行会の働きを支えています。私たちは、今から、もっと多くの教会が「翻訳」の業を覚えて、祈り、支え、育んでくださるように願っています。

どうか、皆様方のご支援を心よりお願いいたします。




おわりに

私たち新改訳聖書刊行会は「翻訳団体」で、「頒布団体」である日本聖書刊行会とは、新改訳聖書の翻訳と頒布の役割を分担して行っています。両者は互いに協力関係にはありますが別団体です。ですから、翻訳支援のための献金のほうは、

振替口座番号:00160-1-24705
名義:「新改訳聖書刊行会」

にお送り下さると感謝です。献金は、必要な文献資料を収集・整理・検討し、定期的に編集会議を行なって、質問や要望に応え、次の改訂に備えるために用いられます。具体的には、資料購入費、コンピュータなどの設備費、翻訳者や編集者や顧問等への謝礼・日当・旅費などの他に、広報費、事務費、家賃などに用いられます。

なお,新しくホームページ(http://www.seisho.or.jp)が出来ましたので、新改訳聖書刊行会の働きを更にご理解下さり、翻訳に関するご質問やご要望をお寄せ下さい。

(2003.11.22)




著作権返還のお知らせ

このたび、2008年1月1日付けで、新改訳聖書の著作権が新改訳聖書刊行会に返還されました。この歴史的背景についての簡単な説明は、「新改訳聖書刊行会」のページの記事「新改訳聖書刊行会の使命」をお読みください。


「新改訳」の著作権  名実共に新改訳聖書刊行会に
和解後の経過措置が終息


新改訳聖書の著作権が今年1月1日から、この聖書の翻訳団体である有限責任中間法人・新改訳聖書刊行会(略称SSK、津村俊夫理事長)に全面的に移行した。頒布事業は従来同様、頒布団体である日本聖書刊行会(略称NSK、岡村又男理事長)が、発行はいのちのことば社が担当する。

同聖書の著作権については、初版(1970年)が製作・発行される際に事業を資金面で支援した米国のロックマン財団が後に権利を主張し、86年に損害賠償を求めて米国で提訴、日米の裁判を経て96年4月に和解が成立した。それに伴う関係者らの話し合いにより、新改訳聖書の発行を円滑に継続するために、著作人格権は当初からSSKに属していたことを確認した上で、和解金の支払い終了まで一時的に著作財産権を「TEAM/いのちのことば社」に帰属させる経過措置をとることで合意していた。

07年末までに和解金の支払いが完了したことにより08年1月1日発行の第3版8刷から、著作権が本来の著作者である新改訳聖書刊行会に戻った。これに際してSSKの津村俊夫理事長は、「SSKが名実共に著作権者となったことに重大な責任を感じる。聖書は個人のものでも出版社のものでもなく、また聖書翻訳は教会のわざであり、教会の祈りの中で翻訳団体に託されている。翻訳団体SSKに著作権が戻ったことは日本の教会にとって大きなことだと思う」と談話を発表した。

今後の改訂に向けての取り組みについては、「聖書が神のことばであると聖書自身が主張していることをベースに、常によりよき翻訳を目指して継続的な努力をしていきたい。原典に忠実であるとともに、日本語の言語環境の変化に対応し、時代に即した訳文が必要。共通の信仰告白に立つ翻訳者・編集者たちが、一致して取り組んでいくことは恵みです」としている。


(クリスチャン新聞2008年1月27日号の記事から)