Q. 新約で「先祖」を「父祖」と改訂されていますが、この意図することは「先祖」であれば、一般的に捉えられやすいので、あくまでも、イスラエルの系図を意識し、イスラエルの「先祖」の方がよいのではないでしょうか?

2010年7月12日

A. 第二版の新約聖書において「先祖」と訳されていたものは、今回はできるだけ「父祖」と訳すようにしました。それは、「先祖」一般ではなく、契約の民イスラエルの「先祖」と限定して「父祖」とした方が良いという考慮もありましたが、それ以上に、原語の持つニュアンスを生かすという意図のためです。「先祖」と訳されている語の多くは、原語では「父」を意味するパテールの複数形であって、直訳すれば「父たち」です。そこで、「父祖たち」と訳すなら、例えばヨハネ4:20,6:31,49,58といった個所では「私たちの父祖たち」とイエスの「父」(4:21,6:32、37,40,44,45,46,57)とのコントラストが明瞭になります。このような対照を明らかにすることで、主イエスの教えとパリサイ人/サマリヤ人の考え方の違いを容易に汲み取ることができるようになると思われます。
但し、ご指摘のあった、「先祖の律法」「先祖の神」「先祖の慣習」と訳されている使徒22:3、24:14と28:17では、原語は名詞パテールの複数形ではなく、パトゥローロスという形容詞が使われています。そのため区別して「先祖」という語を用いたのです。テモテ第2の1:3「先祖以来」もまた、「先に生まれた者」を意味するプロゴノスという語が使われているので、やはり訳において区別しました。